「なんだそりゃ!!それで終わりかよ!!」

次の日の朝の通学電車の中で楽しみにしていた報告を聞いて結城が声をあげる。
「てっきり翔真告白すんのかと俺ら思ったよ。」
三上もまさかの不発に意外な目で見る。

「うん。なんかさ前から薄々思ってたけど未茉ちゃんって男慣れしてるよね?」
「遊んでるってこと?」
「そういう風には見えねぇけど。」

「あ、いやそういうんじゃなくて、手とか握ってももうちょっと驚くなり反応があってもいいと思うのに、顔色ひとつ変えないし眉ひとつ動かさないというか。」
「えぇ!?俺が女ならお前に手握られたらドキドキしてソッコー惚れるぜ!?」

「・・・やめろ。結城」
気持ち悪いぞ。と不快な表情で止める。


「確かに、キタローにも普通に抱きついたりするよな。気持ちいいくらいに堂々と。」
言われてみれば。と三上が口にする。

「そう。なんか慣れてるというか…意識してないっていうか。」

「はぁ?!お前と一緒にいてお前を意識しない女なんているの?!中学校時代ほぼ世田中の女子を虜にしたお前がっ」
信じらんねぇっと結城は思わず声を荒らげる。
「男兄弟に囲まれてるって言ってたし男が身近にいすぎて特に意識しないとか?」
「それはあるかもな。」
三上の分析に翔真は確かにと頷くと、

「らしくないな。焦る気持ちも分かるけどゆっくり長期戦で行けばいいんじゃないか?」
「うん。そうだねありがとう。」
気持ちを悟ってくれると翔真は穏やかにお礼を言った。

「はっ・・・!!!」
電車から降りるとふと結城は思い当たる節を思いだし、何かを閃く。
「確かにアイツ、この前俺らと移動時間盛り上がって話してたら、俺ら普通に男子便所入ってたら、アイツもつられて男子便所入りそうになってたぜ・・・」

“あほか!!お前はこっちじゃねーだろ!!”
“おおっわりぃわりぃ!話に夢中でついつられちまって”

「もしかしたらアイツ気持ちは男なんじゃねぇか・・・?!」
妙な疑惑を向ける結城に
「「・・・・。」」
二人は相手にはしなかった。