並んで座ってると左手にしてるリストバンドと右手にしてるのリストバンドが車の振動で触れ合うと、翔真はその手を絡めるように繋ぐ。

「温かいな…お前の手。」
白くて大きくて厚みがあって落ち着く。
相変わらず心地よい翔真の温もりに肩に頭を預けた。

「緊張してる?」
いつもよりも湿った手のひらを感じて翔真は小声で覗きこむと、

「緊張っつーか、興奮?これから強えぇ奴とやるぞってなると、体内からなんか放出してんのかも。」
「アドレナリン的な?」
「アドデ…??」←難しい横文字聞き取れない。

「未茉ちゃん、緊張した時は手のひらに人を」
「あ?んな古典的な」
「人を三回書いて……」

翔真は握っていた未茉の手を取り、大きな人差し指で‘人’を三回書き、

「で、舐めるんでしょ?」と言いかける翔真の唇がすでに手のひらに近づいていたので、未茉はハッとしてその手を思いっきり引っ込め、

「なっ、なにしてんだよ!!」
「あはははっ。そこはダメなんだ!?」
「あったりまえだろ?!他人に手のひらなんか舐められたらおかしいだろうがっ!?」

「じゃ、キスならしてもいい?」

「頭おかしいんじゃないのか?!このアメリカ人が!!」
「え、アメリカ人??」

いつの間にか小声を忘れた二人が、精神統一してる野村監督の耳に後ろから聞こえてくる聞くに耐えない声にプルプルッ……と震えながら
「何がキスだ・・・!?」我慢できずに立ち上がり、

「お前ら分かってんのかぁ!?これからインターハイ決勝戦なんだぞ!?」

雷を落とされたのであった。


「キスだぁ?全くアイツらばっかりリア充しやがって…なんで俺が負けるんだ」
ぶつぶつと文句言いながら新米斎藤は睨むと、
「うっ…うっうっ」
静かにキタローは堪えながら涙を流すと、

「おわっ!?泣くな北!!お前が泣くと不吉だ!!不吉すぎる!!!俺のこの恋の行方がぁぁあああああ…」