運命の朝が訪れた。


明徳は男女共に大成との一戦に挑む為、軽い朝練を済ませ、高校を出発した貸し切りバスに乗り込み誰一人として口を開く者はいなかった。



と思われたが・・・、


「北、北っ!!聞いてくれよっ!!実はな、桜蘭の美人監督と携帯の番号交換したんだっ!!」

例外が数人いた。

まずは女子の引率顧問の新米斎藤。
大声で叫びたい気持ちを押さえて嬉しそうに隣に座るキタローに興奮気味に話し出す独身25歳。
婚活に力をいれたいが、思いの外バスケ部が強豪になってしまったので、遊ぶ時間なし。
手当たり次第女の顧問を見かけると話しかけてあわよくばを狙うどうしようもない教師に、

「でさぁでさぁ、インターハイが終わったらぜひ、練習試合しましょうって向こうからメールがきてさぁあっ!!これ、脈ありじゃないか!?」

「・・・・」
これのどこが脈ありだか全くわからないキタローは、今日がどんなに重要な日か全く分かってない無神経な教師に冷たい視線を送った。

「これって試合にかっこつけて一緒に食事しましょうって意味だよな!?なっ!?北、なっ!?」

「・・・・」




信号待ちで車が停まると今にもみんなの心臓の音が聞こえてきそうなくらい、緊張が車内には広がっていた。
野村監督はきつく目を閉じながら冷や汗まで流れる程だった。

緊張しすぎて気持ち悪いと結城はガムを食べ続け、三上は音楽を聞きながら目を閉じていた。

キャプテンや新垣さん達は窓の景色を眺めたまま。
前原や二年達は震える両腕を静めるように腕を組んで落ち着かない様子でため息ついて座席にもたれかかる。


「ふぁぁああっ。」

そんな空気もお構いなしに未茉は、大きな声で大きな口を開けてあくびをすると、
「ふぁっ。」
隣に座っている翔真もあくびをして、

「つられちゃった。」

涙目の未茉と目が合うとはにかみ微笑む翔真、この二人も例外だった。