「翔真、翔真ー。」

「Zzzz……」

コンコンーーガチャッ!

「入るわよ翔真。」

翔真は自宅の部屋でスヤスヤと寝ていると、母親が部屋の扉をノックして中へ入ると、

「んー……呼んだ……?」
まだ半分意識は眠りの中だが、目をこすりながら返事をすると、

「お見舞いに来てくれたわよ。入って言ったのに帰っちゃったのよ。それでこれ渡してくれって。」

「え……」
母親に渡された紙袋を開けると、黒のリストバンドが入ってた。


「結城君と三上君とあと、すごく可愛い女の子が来てくれたわよ。」

「!!え、もう帰った!?」
「今さっきね。ってちょっと翔真……!」
飛び起きて急いで部屋を出てマンションの外へと飛び出していった。



「未茉ちゃんッ!!」


エレベーターを降りてエントランスを出ると未茉達の後ろ姿が見えて呼び止めると、

「バカやろ俺らもいるしっ!!見えねーのか!?」

とっさに未茉の名前しか呼ばなかったことに結城は振り向いて怒ると翔真は笑う。


「翔真って寝てても髪くるくるなんだなーあははっ!」

「うん…生まれた時から何やってもくるくるで濡れても乾くとこうなる…」
指差して笑われる未茉に少し傷つきながらも答えて、

「ちゃんと大人しく寝てたかー!?」
「うん。未茉ちゃんが桜蘭に勝った夢見ながらね。」

「じゃ正夢だ。それは。」

「!」
「本当に危なっかしくギリギリで勝ったけどな。」
「うっせぇなー結城は!!勝てばいーの勝てば」
「今までで一番いい試合だったけどな。」
そう静かに三上が微笑むくらいいい試合だったんだろうなと翔真は思うと、見たかったと心底思った。

「リストバンド。」

自分にもくれた黒のリストバンドを三人が腕にしてるのに気づいた。

「さっき会場で売っててキタローにもお揃いで買ったんだ!」
「明徳カラーの黒だぜ。」
「裏側見てみて!」

翔真はリストバンドを裏返しにすると、「あ。」文字が書いてあるのに気づいた。

「インターハイ出場!!……」

「きたねー字だろ?白石が書いたから。」
「うっせー!結城が揺らすからだろっ!!」
「タオル地に綺麗な字を書くのは難しいって。」
三人がガヤガヤと言い合ってる中、翔真はフッと嬉しそうに微笑みスッとリストバンドを着けた手を差し出した。


「みんなで力合わせて行こうぜ。全国。」


「ん!」

翔真の言葉にみんなでリストバンドをした4つの拳を差し出して、ぶつけ合って笑った。