ーーシュパッ……!
「「決まったぁぁあ!!また湊だぁあ!!」」
第一Q終了間際、BIG3の活躍もあり高さが光るインサイドプレーで翔真が一人ですでに10点をあげていて、

「止めらんねーのかよ…」
「クソ……」
匠は、湊におさえられっぱなしでいつもの輝きはそこにはなかった。

そしてガードとしてのゲームメイクも、悉く失敗に終わり、流れは完全に明徳へと持ってかれてしまっていた。



「この調子ならもしかしたら、王子食われるとかいう番狂わせあったら面白いな?」
「全国優勝の王子がかよ!?」
怖いものみたさからか、観客席からはそんな声まで上がったが…

「NO、ありえないな。弟が不調でも兄がいる。去年MVPのあの星河健がーー負かすわけないさ。」

そんな観客の声を完全否定したのは、健の上手さに一度も勝ったことのないマイクだった。




「さて、今頃未茉はどっち応援してるかな。」

数点のリードも流れも許すものの、健は落ち着きはなっていた。

ダムダム……翔真の目の前で惑わすようなボールの動きにも動じてないようだ。

「どっちですかね。」

一番勝負をしたかったのは、もちろん健の方で、その仕掛けを真剣に受けて立つ。

「未茉ちゃんには、勝つから大人しく待っててって伝えてきましたよ。」
「たいした自信だーーでもっ!」
「!!」

健は一瞬の隙を作り、翔真を惑わすように抜き、
「しまっ…」
気づいた時には、もう伸ばしたその手を腕に誘導されてしまい、3ポイントシュートを放ち、

ピー!!!
「オフェンスファウル!!!」

「湊、どんまい」
バスカンを決められ、慰めるように仲間からはタッチされるが、あまりにも気持ちいいくらいに取られてしまいあっけにとられながら健を見上げた。

(なんてーー速さだ…)

「俺も未茉の兄ちゃんのしてのプライドがあるからここで負けるわけにはいかないんだな。」

翔真の頭上を抜けたシュートが決まった歓声の中、健は微笑みフリースローを放った。