「できるんや。未茉は。」
着替え終えた静香がコートを睨みながらギャラリーへやってきた。
「凡人が何ヵ月何年もかけてできるようになることを未茉は瞬間で簡単にできてしまう恐ろしい才能を持ってんや。」
それが天才だと分かってる静香は何一つ驚かなかった。
…そして、
「あんたの友達は随分生意気な挑発してくれるじゃん?」
「た…田島さん!!」
「受けてたってあげないとね。」
静香の隣にやってきてそれでもどこか余裕すらもて余す田島は微笑んだ。
「白石……!なんてプレーヤーなんだ…」
「今年の女子は、見ごたえあるぞ!!」
「「白石!!」」「「いいぞー白石!!」」
巻き起こる白石コールは、プレーに観客の心を掴み、一気に王子の声援を黙らせた。
「凄い……」
白石の才能を分かっていた明徳ベンチ部員と監督と、キタローだったが、この大舞台で平然とやってのけ勢いずけるその凄さに鳥肌がたった。
未茉の対策は充分すぎるほどにしてきた王子学院だったが、
「キャプテンの鈴木さんも、あのガードの前原さんも、未茉をいかそうと想像以上にいい動きしてる…」
チームとして明徳が何段も上をいっていて、ベンチにいる莉穂は涙で濡らすタオルを握りしめた。
76対49
優勝候補の一校として注目していた王子に明徳が圧勝した。



