「…白石、行くよ。」

彼女のプレーをまだ見ていたかった未茉は後ろ髪を引かれる思いでコートの隅を歩いてくと、プレー中の田島と目が合った。

「ニッ…」と微笑み、髪を靡かせ背面シュートを決める。

「へぇ。おもしれぇ。」

何度も再生したくなるようなシュートシーン……そんな風に言えばきっと彼女のこの凄さを人に伝えられるだろう。

「「わぁぁぁああああ!!」」
「「いいぞぉっ!!」」
「「いけぇーー!!!」」
怒号にも近いような熱の入った応援がゲーム終盤に向け明徳の女子更衣室まで聞こえてきた。
だがみんな心を落ち着かせるように無言で着替えていて、

「……」

ベンチに横たわり仰向けになりながら目を閉じて未茉は何度も瞼の裏に焼き付けた田島のプレーを思い出しながら、手を動かす。

「何やってんの…アイツ」

一人孤立して妙な動きをする未茉を見て矢野が言うが、前原はそれを見ていた。

「ーー準備できた?行くよ。」

キャプテンがそう言うと、女子は声を揃えて返事をした。

「白石!行くよ!!」
一人遅れて立ち上がった未茉にキャプテンに強めに呼ばれて足が意識とは裏腹にコートへ動く。

タオルを頭から被り未茉は目を閉じて頭の中でプレーをイメージしながら歩く。

‘ダムダムダム…’ボールが床を弾む単調な音が脳内では響きそれに合わせて体はリズムを取ってる。

「お、未茉やないか。」

試合を終えて快勝して気分上々のユニフォーム姿の静香が前からやってきて、

「莉穂との対戦やな!どっち応援してやろうか思うてたけど、かわいそやからうちは未茉を応援してやるで!!どうせ負けるんやからな!!!」

あっははははっ!!!とからかってやろうと大きな笑い声を響かせながらも未茉は何も反応すらせず、

「ん・・・?」

静香は自分の世界に入り込み目すら合わせず去ってく未茉の後ろ姿を見て一人取り残された。