「健君!その一緒の子、明徳のエースだよね?知り合いなの?」
さっきまで星河兄弟を取材していた雑誌記者がカメラを構えてやってきた。
「すごく可愛い子だよね。絵になるな!せっかくだから写真取らせてくれないかな?匠くんも三人で。」
「やだやだ」と未茉が逃げるよりも先に健はスッと彼女を隠すように立ち、
「すみません。彼女はこれから大事な試合を控えてますのでそっとしてくれますか?」
「あ…ああ。分かったごめんね。」
滅多に嫌な顔しない健が一瞬見せた顔に記者はすぐさま引いていった。
「ありがと。」
「いや。写真気を付けろ?まだ大々的に気づかれないうちは清二さんの娘ってことは伏せといた方がいい。お前の才能も実力もお前のものなんだから。」
「おう、さんきゅ。」
「でもチャンスじゃないのか?」
匠がそこを割り込むように健に言った。
「何が?」
「俺は未茉が明徳なんて無名高にいるのは反対だね。清二さんや雅代さんにも相談したけど絶対王子に編入させるべきだと俺は思う。」
「は?編入って何?」
「匠…!」
「こんなに才能に溢れた未茉を健だって昔から見てきたろ?この才能は無名のワンマンチームの為じゃない。強豪校に入って颯希さんのように白石の名に恥じないように全国ナンバーワン高校に導く為のものじゃないのか?」
「待ってよ匠兄、一体なんの話して」
「はいストップストップ。試合前だぞ匠。未茉の才能に惚れてるのは分かるがとりあえず試合に集中しないと!な。」
熱くなる匠に未茉が混乱しないように健はここで話を止めウィンクしながら微笑み、
「王子戦頑張れよっ未茉!!古巣だからって容赦すんなよな!」
「うん兄貴達も頑張って一緒に全国行こっ!!」
「おー!応援してろよ!」
何か後味の悪い匠を引っ張るように、健は彼女に手を振りコートに戻っていく。



