「キャプテン、昨日はマイクの試合見に来なかったの?」


「・・・。
年上なんだから、マイクさんでしょ?何回言わすの?」
バスの中で窓側に肘ついて座るキャプテンに睨まれる。

「ジョンが予選で負けるわけないじゃない。それにあんたじゃないんだもん。学校サボってまで見に行くわけないでしょ。」
「だってマイク…さんはしょっちゅうキャプテンの試合見に来てんのに。」
「心配症だからね。てかベラベラうるさい。試合前なんだら集中させて。」

「はぁーい。」

つまんなそうに未茉は膨れ面をしながらバスの座席に座った。
男バスが一足先にベスト4進出を決めた翌日の朝7時、明徳高校バスケ部男女を乗せたバスは会場へと発車した。


学校には‘明徳高校男子バスケ部・祝・インターハイ決勝リーグ進出’の横断幕が吊り下げられた。


「この隣に女子も並べるぞっ!!」
本校始まって以来の快挙に、職員全員から絶賛の嵐の野村はいつも以上の気合いの入れようだった。

「えっーと今日集まる高校の女子顧問の先生はっと…」
それとは対照的に、うっへへへっと新米斎藤は、こっそりとFacebookで情報を調べては、婚活に余念がない。
その姿を見てキタローは、軽蔑の眼差しを送っている。


だが対照的にバスの中は静まり返っていた。初のベスト4という決戦の相手が、実質大成と肩を並べる程の男女共に名門王子高だからだ。

「♪……♪…」
イヤホンで音楽を聞きながら精神統一を図る二年。
無言で外の景色を眺める三年。
それぞれ緊張感と緊迫感が漂っていた。

ベスト4進出を決めたのにも関わらず、後ろの席に固まって座る男子達も女子に気を使ってか無言だった。

まずはベスト4が目標だったが、インターハイ出場が更なる目標に変わった。
男子達は、昨日Aブロック大成とCブロック明徳が決戦リーグ行きを決めたが残り2ブロックの決戦を見に行くのだ。