「ちょうど体の違いが出てくる中1の時までは男だろうが天才相手だろうが負け知らずに来たのに、明らかにプレーの質では勝っていてもパワーで今まで勝ち続けた相手に負けてくんですから、相当悔しい思いしたはずですよ。」
「……ああ。確かにそうだった。」
色々思い当たる節に頷く翔真の着眼点のよさに健は驚くと同時に、
‘なんでなんで…?なんで急に勝てなくなったの?あたしが弱くなったの?なんで?’
‘弱くなんかなってないよ!未茉は弱くない!’
(ちょうどあれは三年前か…)
未茉が中一の時、1on1で立て続けに負けた時、大泣きさせたことを思い出した。
(今までどんな実力者を相手に余裕で勝っていた未茉も体格とジャンプ力に男と女の差がついてきて負け始めた。
あの時、念願だった未茉に勝ったのは嬉しかったが泣かせてしまったことが何よりも胸が痛かったな。)
「‘未茉が男だったら’って誰もがみんなそう思ってたよ。あの頃は。」
健の言葉に翔真は自ずと気になっていたことに納得した。
(認めたくなかったんだろうな。女だから負けるーーっていう現実に。未だにまだそういう部分残ってるもんな未茉ちゃん。)
「……ねぇ王子女バスが見に来てたわね。」
コートの新垣が汗を拭いながらギャラリーから次戦の決勝の相手の王子女子が帰ってく姿を見上げた。
「北。」
その横では、荷物をまとめてかたづけてる北を前原は呼び、
「今日の映像私のパソコンに送ってくれる?」
「はい」
「何よ前原。白石の奴隷の北なんかに…」
未だに二年はキタローの作った飲み物は一切口にしないくらいの矢野は冷たい視線と共に怪しむも、
「自分のプレー見たくて。」
そう答える前原にキタローは少しだけ頷いた。



