「勝負ついたかな。」
健はもう心配なさそうだ。と微笑んだ。
「いや、点差あんまないぜ?」
彼女の試合だからかあまり油断できなそうな表情のマイクに、
「ワンマンチームっーのは、エースの出来次第だからな。」



そしてまたすぐにファウルの笛が吹かれた。

「何っ!!?なんでだよ!!立ってただけじゃねぇか!!!」

また明徳オフェンスのゴール下で笛が吹かれて榎本は声を荒らげた。


「まだ3Qだろ…榎本のファウル4つ目は痛すぎだろ…」
「白石、ファウル誘うの上手すぎな…」
「っーか、レベル違いすぎないか?あの天才少女。」

ゴクッと息を飲むような静寂が一瞬あった後、わぁっ……!!と会場中一斉に拍手と歓声が上がった。


明徳二年は、未茉の活躍を複雑な表情で見つめていて、前原だけは白石を無表情で見ていた。

(アイツがガードやった時、うまく三年の先輩達を回してたし、あんな相手の魂胆を逆手にとってボールを落ち着かせて、ここまで建て直すなんて…ムカつくけど凄いとしか言いようがない。)



ファウル四つ目をもらった榎本は交代を余儀なくされ、ズタズタにされたプライドと込み上げてくる悔しさで涙を浮かべてベンチに座ると、野中の監督が支えるように背中を強くさすっていた。


そして一気にバランスを崩した野中工業を明徳は、未茉と鈴木が点を重ねていき、72対40と見事に大差をつけ圧勝した。