「もしかして、あのでかいのを白石につけるとかしないよね…?」
ベンチの三年が嫌な予感を口にするも、
「いや、ついたところで榎本には、白石は押さえられない。スピードのミスマッチが生まれるだけだ。」
部員達の胸騒ぎを立ちきるように野村監督は否定した。
ピーッ!!
未茉にパスが渡りボールを持った瞬間、未茉をマークしていたディフェンダーがすぐ様、手を出し必要のないファウルにいく。
「あんだよ…!!」
「なるほどね…」
野中の意図を読み取ったように、ふーん。と健は頷いた。
「白石がボールを持った瞬間にファウルで止めるっーことか。」
マイクも翔真もその意図が分かったように頷くが、
「でも5ファウルでフリースローになったとしても、シュート確率の高い白石に決められるよりマシってことか。」
「攻撃のリズムを壊すことと、未茉のフラストレーションをためてゲームの流れを明徳に持っていかれないようにすんのか。無駄なことだな。」
「去年の全中の決勝戦診てたけど、白石未茉は全国トップクラスの選手よ。申し訳ないけど、あれを止められるのは、田島さん率いる大成しかいないわ。」
野中工業のベンチでは、野中の監督も未茉のプレーを見ながら悔し紛れに呟いた。
「でも、だからといってうちに勝つ手段がない訳じゃない。うちには東京でも五本の指に入るセンター榎本がいる。明徳のセンターにゴール下の勝機はない。」
どんな手段を使っても、この試合は勝つ。
そう野中工業でも覚悟を決めていた。



