「おいっ、テメェ!!」

未茉は背後から聞こえてくるスポーツマンらしからぬ声が聞こえてきたが、自分のことだとは思わずシュート練習を続ける。

「テメェだよ!!テメェ!!何無視してやがるっ!!!七番!!」

「七番……?」
ピタッと未茉の動きが止まり振り返ると、物凄い血相を抱えた榎本が向かってやって来て、

「テメェ、試合前に男といちゃついて見せつけやがって調子こいてんじゃんじゃねーぞこらぁ。」


「…むっ白石の危機…」
失神しかけてベンチで休んでいたキタローだったが何かを察知し、ぱちっと目を覚ました。
「おわっ!!なんだよ急に!!!」
急に目を覚ますので近くにいた新米斎藤が驚き腰を抜かす。

「ーー!」
唇をひん曲げて、細い目で全身なめ回すように威嚇し、今にも殴りかかりそうなの榎本の様子に隅で見ていた匠は心配で駆け寄るも、

「えっ調子?まだこいてないぜ。」

ケロッとした顔で答える未茉に益々押さえられぬ感情が溢れだし、「テメェ」と右手が出そうになったのを見て匠が止めようとコートへと踏み出した時、

ーーパシッ!と未茉は榎本の右手を掴み、

「喧嘩なら試合で勝負つけようぜ?」

全く怯むことなく、真っ直ぐと相手の目を睨んでいい放つと、思わずその迫力に一瞬たじろいだ。

(痛ぇ……)思わず榎本は握られた右腕が痛すぎて口にしそうになるも堪え、

「テメェ……」
「言っとくけどな、あたし握力は女子では誰にも負けたことないからな。」

「……!」


「君達!!試合前だぞっ!なにやってるんだ!?」
審判が駆けつけ監督や部員達が二人を引き離す。

(アイツ……きゃしゃなくせしてなんっー力だ…)
腕に手跡が残るほどの彼女の腕力に一瞬怯むも、

「○☆&◇★●□◆♡◇◇……」
両手で何やら拝み続け念を飛ばすキタローの怨念を感じ、
「なっ・・・なんなんだよあの片目の男はっ・・・」
寒気と只ならぬ恐怖を感じてそそくさとベンチに戻っていった。



「野中工業のエースの榎本が中々癖の強い相手だって心配性の匠に聞いてさ。」
この試合にきた理由を健があれだと話す。

「東京といえど、土地柄的なヤンキーが多いせいかああいう血の気の多そうな女子がいるみたいで…」

「怪我しなきゃいいんですけど」
翔真の言葉に健も相づちをうつが、
「ああ。それが心配だったけど、明徳のマネージャーも中々癖が強そうだなぁ。」
キタローを見て健は目をぱちくりさせるてる・・。