「あ、マイクやっぱり隣いい?」
再びギャラリーに現れた健は翔真とマイクの元へ戻ってきた。
「健さんだ…」
「さっきの女なんなのよー」
「マジショック……」
周りの女子達をざわつかせながら。
「おう。いいぜ。なぁ?翔真」
「……」
「翔…」
マイクは確認するも、翔真は肘をつき未茉のいるコートを見つめたまま健に目もくれようともしない。
「WAO!!」
(余裕無くしてる…この男でも怒ったりすんだな。)
いつも澄まし顔の奴がと思うとマイクは面白くて小さく吹き出した。
「しかし珍しいな。星河が俺を誘うなんて。」
「でけぇ男二人の間にいれば囲まれないだろ。」
「おま・・・っ本当に嫌みな奴だな。」
「あはははっ。」
健は笑いながら、あえて翔真の隣に腰かけた。
「俺と未茉の関係性は、尊敬してやまない恩師の娘であり、幼なじみで一番大事な妹。」
「…!」
翔真が聞きたかったことであろうことを、あえて健から口を開くと、驚いたように振り向く。
「ま、さしあたって今の所は?この先はどうなるか分からないけどね~」
安心を与えたように見えたが、確信をはぐらかすような上手な口振りにからかわれてるようで翔真は再びムッとする。
「あれ、弟は?匠は来なかったのか?」
「心配だからコートの隅で見てるって。」
マイクの言葉に健はコートの隅に立って未茉を見守る匠を指差した。
「心配?」
「え。知らない?野中工業のこと」
「いや全然。」
「いや。実力的には明徳といえど、未茉がいるんだ。負けるとは思ってない。相手が野中じゃなければ今日は俺ら見に来なかったよ。」
「…どういう意味だ?」