野中工業高校の控え室では、チームを取りまとめる一人の女の声が響き渡っていた。



「明徳なんつー聞いたこともねぇ弱小校なんかズタズタにしてやるぞ!!!」

「「はい!!」」

「安心しろお前ら!!この都大会ベスト5のこの榎本様が野中にはいるんだ!!負けるわけがねぇ!!!」

「行くぞ野中!!」
「「おう!!!」」

まるで男のような激しく荒々しい口調で更衣室から廊下まで響くような大声で円陣きった野中工業高校。

ーーバンッ!!!

壁に叩きつけるような勢いでドアを蹴りあげてキャプテンを先頭に出てくると、廊下にいた午前の試合終わった他校の男子バスケ部員達が通りかかると、

「おらっ邪魔だ!チビ!!」

185センチ、80キロの男子顔負けのバスケ体格に恵まれ、サイドに反り込みの入ったショートに細い目で辺りを睨むように見回すと、

「うわっこええ…」
「女かよあれ…」
男達はあまりの迫力に逃げるように立ち去り、その女の風貌に言葉を失う。


(明徳なんか一瞬で終わるな。お遊びだ。)

クチャクチャと音をたてながらガムを噛み、一人悪目立ちのキャプテン兼エースの榎本瑠花(エノモトルカ)
野中工業の顔ともいえる彼女は余裕の予選突破へと意気込んでいた。

(これに勝って王子と戦って決勝リーグで愛しの星河兄弟と会えるな……プッ!!)

「なにニヤニヤしてるんですか榎本さん…」
急に顔を赤らめてにやけるアンバランスな態度に部員達が恐る恐る突っ込むと、

「ぁ?乙女な気分の時に話しかけるんじゃねぇえっ!!」
「ごっごめんなさい!!」
機嫌を損ねてしまい殴られるんじゃないかと恐怖に怯える部員を引き連れ榎本はコートに入ると、


「あぁ!!?」

去年の予選で一目惚れした愛しの星河健が、対戦相手の女を抱っこしながらコートの隅でいちゃついてるのを見て、驚愕する。