「じゃ行くか匠。」
「ああ。またなマイク。」
「おう」
「じゃ。」
二人は軽く頭を下げてギャラリーを歩き出すと、きゃああっと真っ赤な顔をした女の子達の華やかな歓声の花道が出来ていく。
「なに?」
隣で並んで歩く健の視線に匠が気づき聞き返す。
「いや…お前が誰かに敵意むき出しに嫌み言うなんて珍しくね?訳あり?」
双子の兄・健はコート以外でも洞察力は鋭く、弟の顔色の変化くらいなら手に取るように分かる。
「何でもない。」
「あー確か、明徳だっけ…?あーそうか分かった。」
勘までも鋭い健はクックッと口を押さえながらニヤニヤと笑みを溢す。
「なっ何笑って」
「いや、早く未茉のとこへ顔出しに行こうぜ。」
匠の背中を励ますように軽く叩いた。
「あれ、東条さん。」
「どうだった?我が王子学院の健さんは。」
なぜかどや顔でやってきた莉穂は、
(あまりの格好良さに怯んだに違いない。)
確信を得ながら翔真に言い放つも、
「あ、うん。まだプレーを見てないからなんとも…」
「ピキ…」血管がキレる音。
(このユルキャラ野郎・・・。まずあのパーフェクトな見た目で怖じ気づくとこだろ!!)
と、怒鳴ってやりたいところだったが、
「健さんはね、その名の通り我が王子学院の殿堂入り二代目の王子様なの。品行方正の立ち居振舞いにあの端正なお顔立ち、成績優秀どころか東京トップ、そして去年の全国優勝へと導いたナンバーワンプレーヤーよ。」
「へぇ…非の打ち所がない凄い人なんだね。」
「・・・・。」
普通の感想を述べる翔真に、こらしめてやりたいどころか、こちらが空回りしてるみたいな莉穂だった・・・。
(こうなったらやはり、試合でぼこぼこにしてもらうしかないか。)



