「あ…」

気づくとそれまで暗かった表情が一瞬にして一変し、未茉の顔から笑みが溢れたのを翔真は見逃さなかった。

その男は反対側のギャラリーの手すりに手をかけて、肘をつきながら微笑み軽く手をふった。


「!!」

ーーダムッ!
ディフェンスの手がボールに差し掛かったのを合図にくるんっと体をターンさせて、

ーーシュッ!!!

「「早いッ!!」」

誰も触れさせられない一瞬のスピードでリングにボールを放つ。

「「き……決まったぁぁぁあ!!!」」
そのあまりにも鮮やかなシュートに明徳ベンチは立ち上がりギャラリーも声を張り上げた。


「ナイシュー。未茉」
ニッと頷くように微笑むその男に翔真は視線を向けると、

「…」

その視線を交わすように去っていった。



「健兄…!?」

シュートを決めた未茉はその去る姿を見上げるも、

「あ。」
ギャラリーから身を乗りだしその男の行方を視線で追う翔真を未茉はムッと睨み、


「わざわざ言われなくても分かってるっつーの!!翔真のバカ野郎!!!」

「「ん?」」
未茉の怒鳴り声に翔真を始めみんなが首を傾げるが、その表情はいつもの未茉に戻り、そこから誰もが目を疑いたくなる程の怒濤の反撃が始まった。