「みんな……」
涙が滲んだ時、鈴木キャプテンが背中を叩いた。‘行くぞ’って。
(そうだよな……なんの為に今まで練習してきたのよ……悔しくないのかよ……!!あたしなにやってんだよ!!)
気合いを入れ直し自分の顔を思いっきり叩いた、その時だった。
「未茉ちゃんっ!」
パシッ!とボールを受け取った瞬間、リングのすぐ上のギャラリーの手すりに手をかけた翔真が未茉を呼んだ。
「!?」
ダムダムと左手でボールキープしながら寄ってくるディフェンスを右手でガードし顔を上げた。
「~~~~」
「あっ!?何!?聞こえねぇ!」
翔真は口元に手をあててパクパクと何かを伝えようと口にしてる。
「聞こえないって」
翔真を見ながら手を出してくるマンツーマンの激しいディフェンスを感覚でうまく退き交わす。
「なんだアイツどこ見て交わしてんだ……」
「っーか翔真と何喋ってんだよ。」
結城や三上が驚きつつも未茉のプレーに目をやる。
「だからね、」
「おう、何!?」
手すりに手をかけて翔真は一文字一文字をゆっくり口パクするのを未茉は動きを変えながら見あげる。
「なんで取れないんだよ!!」
焦る品川女子が二人がかりのディフェンスで未茉に行くがボールは取れない。
「す。」
「す?」
翔真の口の動きを読み同じ口の動きにして聞き返すと翔真は頷いた。
「き。」
「き?」
「だ。」
「?だ?」
「よ。」
「!!」
翔真がそう言いかけた瞬間、全く別の方角から
「未茉!」
その別の男の声に振り向いた。



