「えっ……!!あれ本当に未茉!?動きが悪すぎる…!!ミス連発じゃん!」
「どうしたんだよ未茉…緊張とか?」

3Qが始まったコートを見てギャラリーの一番隅のベンチに座り絶句をしているのは、親友の高校デビュー戦はどうしても見たくてこっそり学校サボってきた王子学院の莉穂と駿だった。


「未茉は緊張とかめったにしないタイプだし、あの総体の決勝戦ですら……。あんな不調な未茉見るの初めて。」
後半開始一分ですでにシュートに行く回数も少なく莉穂は我が目を疑った。

「あ」ギャラリーにやってきた集団に気づき、変装用の帽子のつば越しに駿は睨んだ。


「あれ。二階堂に東条さん。」

着替えを済ませた明徳男子部員達が応援席に向かってると、翔真が二人に気づいた。
「湊君。」
二階堂は振り返りもせずに肘ついてコートを見つめたままだが、莉穂は立ち上がって翔真の元に駆け寄った。

「湊君、未茉に何かあったの?どっか悪いとか…」
「え?」
莉穂が思わず言葉の途中でつまったのは翔真のすぐ横を歩く親しげな女の子でーー見覚えのある女の子だった。

(この前、静香と話してた全中の世田中の美人エースの子だ…)
二人は世田中出身だから顔見知りなのも分かるが…、
(美男美女すぎて並ぶと嫌みな感じ・・。)
冷静に鼻につくものを感じる莉穂だった。


「翔真の友達?」
ひょこっと翔真の背中から顔を出して尋ねる桜蘭の美人エース。
「ん。王子女子バスの子だよ。」

「二年前、全中の東京決勝戦で戦いましたよ。前園さん。」
「それは分かるけど…。あなたのことは覚えてないわ。」

「ええ・・。どうせ私はベンチで試合出てないですから。」
(このあざと系女子め・・・)
勝ち誇ったような美人エースの笑みに瞬間的にムカッとした莉穂は、こんな女を連れている翔真に対しまた株が下がった。


「なんか変だな… 白石」

コートを見つめながらいつもと明らかに違う未茉を見て三上は呟くと、翔真は彼女の手を振りきりギャラリーの最前列に行き、未茉を見た。


「え……未茉ちゃん?」