「前原っ!!そこで白石へのパスだろ!!?何迷ってんだ!?大成相手にそんな隙だらけのパス回し通用すると思ってんのか?!」

「すみません……」

予選初戦を控え、なんとか女子のこの新チームを形にしたい野村は、前原と未茉が全く噛み合ってないプレーに苛々し、ずっと立ちっぱなしで怒鳴り声をあげ続けていた。

「前原さん、今の場合はあたしじゃなくて新垣さんにパスを…」

「あんたの貰い方が悪いのよ。」

コソッと小声で前原は未茉に舌打ちしドリブルで攻め混みながらすれ違い様に言った。

「あ?」
未茉はその言葉にボールをコートの外へバウンドさせた。


「私のパスが悪いわけじゃないわ。」


「何やってんのよ…二人とも」

苛立つ前原が手も足も止めると、キャプテンが二人の間に入るが、

「大体、白石中心のチームってなんなんですか?去年の夏からずっと今のメンバーでチーム重ねてきて、ここへ来てこんな変わるなんて」

ガードの前原はこの数週間でがらりと変えた戦術に対し、納得がいかないようだった。

珍しく反論するらしくない前原に、キャプテンも心配の表情を浮かべた。

「そんなことない。あなたはできないなんて音をあげるような子じゃないわ。」

言葉少なく、思いを顔に出さなくとも、できるようになるまで黙々と静かに練習を重ねる決してねをあげるような子ではないことを知っていた。