「……すぅ…」
「インターハイ予選終わったら高校バスケの厳しさと現実が分かるはずだ。そうしたら編入手続きして王子にーー」

「すぅ……すぅ……」

「人が真剣に話してるっていうのに・・・・!!」

熱弁で話してる途中にいつの間にかすやすやと寝てしまった未茉の寝顔を見て‘やれやれ’とため息ついた。


「寝顔も無防備なんだよな…」

大きな手で未茉の頬を撫でると幼い頃からこうしていつの間にか寝てしまう彼女の寝顔を見てきたことを思い出した。


(未茉と健と親父でよく公園でバスケしてた。昔は泣き虫のくせに負けず嫌いで、いつも健と俺に相手になってもらおうとくっついてきて、……可愛くて仕方なかった。)

‘匠兄ちゃん!ミニバス入ったよ!!’
‘匠兄ちゃん!センターになった!’
‘匠兄ちゃん!未茉やっぱ三番だって!コーチに褒められた!!’

‘匠兄ちゃん!未茉もワンハンドシュートしたい!!’
‘ダンクしたいから牛乳いっぱい飲むんだ!!匠兄ちゃんっ!!’


(昔から目標はあっても欲がないんだよな未茉は。)

「ん……」

頬を撫でる匠の大きな手を未茉は無意識に触れて呟いてた。

「翔……真……」

「……!」
一瞬つられてウトウトし始めてたのに匠はその寝言にピクッと眉をひそめ、上がっていたはずの口角をおろした。



「やっぱりあの男は気に入らねーな。」