「こんにちは。」

男の声が聞こえたと思い、扉に目をやるとぷぷっと笑いを必死にこらえながら挨拶する翔真が立っていた。

「超ーーママのタイプッ!一体いつからのお付き合いなのよ!!ちょっとやっだぁぁ~~!!もぉ~~湊君っていうのぉ~~?!未茉の母ですぅ~~」

きゃぴきゃぴとリビングからはママの弾んだ声が廊下にまで響いていた。


「もーママいい加減にしろよな!!」

着替えを済ましてリビングに入るとソファーに座った翔真が楽しそうにママの相手をしていた。

「なんで教えてくれなかったのよぉ!!こんなにカッコイイ彼氏が出来たなんてママ全然っっ聞いてないぃ!!」
コソッと未茉の耳元で肘で脇を突っつかれながら、訴えられる。

「いってぇなぁ~!翔真は彼氏なんかじゃなねぇよ!!」

「現時点、残念ながら。」

聞こえていた翔真はにっこり微笑みながら言った。


「やだぁー!!ママが残念よママが!!うちの子なんかじゃ湊君に釣り合わないでしょうけど、そこをなんとか親子共々宜しくお願いしますねぇ~~♡♡」
「はい、ぜひ。」
「きゃぁあっ♡」

「おい!もう行くぜ翔真!」

「えっ、やだ未茉ちゃんそんな格好で行くの?!湊君とお出掛けなんだからもっと可愛くしていきなさいよ!!」
練習試合の応援に向かう未茉の色気のないカジュアルな格好に玄関先でママに呼び止められ文句をつけられる。

「あ?いいんだよ。なんでも。」
「よくないでしょ!!湊君の前なんだから!!嫌われたらどうすんの!?スカートにしなさい!スカート!!」
「もーうるさいうるさい!!練習試合に行くんだってばもう!!」

「じゃスカートは今度デートの時に着てね。」
翔真はわざとママに聞かせるように言うと、‘それもそうねぇ♡’と喜び始め、

「あっ、湊君よかったら今度ご飯食べにいらっしゃいよー!!」
「はぁーい!」
玄関で大きな声で手を振る熱烈ラブコールに翔真も笑顔で手を振って答える。