「湊が女じゃなくてよかったわ。」

汗を拭う田島がベンチに座るマイクに独りごとのように呟くと、
「…ああ、白石と組んだらもう右に出るチームなんていないんじゃないか。」
同じことを感じていたのか、二人を見るマイクは頷いた。

「あの子をよく理解してるのか分からないけど、湊はあの子を引き立てるのが上手い。あれが女で白石と明徳にいたらうちは間違いなく負けるね。」

「昔から知ってるって言ってたし白石のプレーを知りつくしてんじゃないか。」

「だとしても、あそこまで白石のプレーを最大限まで引き立ててやれる奴は明徳どころか東京にもいないんじゃない?」
「…」
「逆を言えば、湊だってそう。湊の実力を最大限に引き出せるのは、白石かもしれない。互いの天性の才能か。バスケットIQの高さか。」


「アイツは…翔真は、昔から自分の才能をひけらかすことに遠慮してる気がするよ。俺に対しても、結城や三上に対しても。
一度でいいからアイツの本能剥き出しの熱いプレーが見たいんだけどな。」

心なしかどこか寂しそうに話すマイクの横顔からどこか物足りなさを感じていたようだ。

「あの二人が大成に入学すれば、あの才能を生かしてやれる俺や田島がいるのに明徳じゃ勿体無いな。」

「絶賛ね。珍しく」
「ああ……そうだな。それと」
「……」

「この勝負を楽しむ白石を楽しませてあげようとプレーしてるんだ。」

「は?なんて生意気な……」
「ぞっこんだからな。白石に。」

ーーグシャッと飲んでいたペットボトルを握り潰して立ち上がった。


「だからーー楽しませないようにしてやるか。」

「いいね、ジョン。そういう顔好きよ。」
久々に部活で息が上がる田島は顔を上げ、微笑むと、
「…もうからかわないでくれ。」
そう背を向けてコートに向かっていくと、田島は深いため息をついた。