「あ……!!田島さんっ!」

「インターハイ前の敵地に乗り込むとはいい度胸してんじゃん。白石。」

腰に手をやり人差し指でボールを回しながら見下しながらマイクに目をやった。

「マイク、あんたが入れたの?」
「すみません。」

睨まれて大きな体を小さく丸めて謝るマイクを見ると、田島の権力が遥かに上なのは一目瞭然だ。


「初めまして田島さん。明徳高校バスケ部の湊翔真です。お言葉に甘えて練習の邪魔してすみませんでした。」

立ち込めた気まずい空気をかきけすような柔らかい翔真の笑顔と挨拶に

「へぇ。あんたが噂の湊。」

ふぅーん。と間近で翔真の体を見回しながら上から田島は微笑み、

「カッコいいね。タイプかも。」
「ありがとうございます。」

少しホッとしながらマイクは翔真と未茉を連れて歩き出そうとした時、

「マイク、まさか敵を踏入れさせといてこのまま帰すんじゃないでしょうね?」

「「はいぃ?」」
マイクと未茉は田島の言葉にきょとんとする。


「それなりの洗礼受けて帰ってもらわないと。」

田島は勢いよくボールを投げてると、パシッ!と今度は翔真が片手で受け止めた。


「揃いも揃って明徳のルーキーが大成の地に現れたんだから、可愛がってあげようよ。マイク。」

「…と言いますと?」

「ちょうど監督も三年男子も練習試合に行っていないし、やろうか。2対2。」

田島が女子のコートに踏み入れた途端、部員達は一斉にコートから出ていった。