カァカァッ……
ピンクに色づく夕焼け空をカラスが一斉に飛び回り電線に移動を始めるその真下では、
「翔真のバカッ!!寝過ぎなんだよ!!」
洗濯が終わった早乙女のジャージを片手に駅から大成高校への道を二人は走っていた。
「もーっ!!またこの道を汗だくになって走るなんてなんの因果なんだよ!!」
練習試合に遅れて必死に駆け抜けた道をまた走ってるデジャブ感に文句ばかり垂れて走る未茉に、
(自分だって寝てたのに…)と全て自分のせいにされた翔真は唇を尖らした。
「あーもう今日は部活遅刻だよぉ!!キャプテンに怒られる!!」
コインランドリーで起きたのが三時すぎで寝すぎた二人はようやく大成高校に辿り着く。
「おわっ、なんか金持ちの匂い漂う……」
立派な門構えに、大きくそびえ立つ謎の地蔵と、新しい校舎に、広すぎるグランド。そして上品で頭良さそうな制服に身を包まれ下校を始める生徒達。
さすが東京で一、二を争うスポーツ高校の象徴だ。校舎にはありとあらゆる部活の全国大会何位や生徒の名前の横断幕が垂れ下げられてる。
「うちら浮いちゃうんじゃねぇ?」
と隣にいるはずの翔真に言うも、彼はさっさと門をくぐり体育館の方を目指してる。
「ちょっと待てよ!翔真ぁ!!」
その後を必死で追うと、ジロジロとすれ違う生徒達の視線が突き刺さる。
武道に器械体操やバレーなど色んな設備が整うそれぞれの体育館が見えてきて、聞きなれたドリブル音と響く掛け声が聞こえてくる体育館をまるで知ってるかのように翔真は歩いてく。
「待ってって言ってるじゃん!!」
いつもは人の後ろをのんびりと歩いてくる翔真のくせに今日は人より前をさっさと長い足で歩くから、未茉は駆け足で追い付くと、
「いたいた」と翔真が指差すと広い体育館で一年は隅のほうに追いやられ腹筋をしてる集団に早乙女がいた。