「…中一くらいまでは」
「ん。」
「中一くらいまでは本当に自分は強いと思ってた。男子のゲームによく交じって余裕で勝ってたし、背も伸びて男子にも当たり負けしなかったし。」

男に交じって男と一緒のことすることで‘強い’って思ってた。負けないプライドを身に付けてた。

「でも中二くらいからかな。同じくらいの背なのに禅に吹っ飛ばされてそれから何回か飛ばされたりもしたけど……段々力加減されてるのに気づいて本当はプライドズタズタだった。」

‘パワープレーしたいもん!’
‘翔真みたいにでかかったら…’
彼女の言ってた言葉を思い返した。 

「なんか最近周りは強くなって自分が弱くなってくことが男と女の違いだとかそういうの頭で分かっててももどかしくなる。」

髪をクシャクシャとさせながら苛立ちを押さえるのが必死だった。


「ねぇ、未茉ちゃん。」

未茉の前にしゃがみ目線を揃えると、震える両手を握って見つめ、

「男にだって敵わない相手いっぱいいるし、きりがないんだよ。誰だって一番強いわけじゃない。」

「……」
「どんなに強い人もいつか必ず絶対に負けるんだよ。負けることで何かを変えてくきっかけになるんだよ。」

ずっと同じままの人間はいないんだよ。って。
今一番もどかしさに葛藤してた未茉が探してた言葉を翔真はくれたのかもしれない。