「何それ昨日の早乙女のこと言ってんの?」
「未茉ちゃん、危ないよ。この辺は治安よくないし、テレビニュースとかちゃんと見てる?日本だって女の子誘拐されたり、襲われたりしょっちゅうだよ。」

「あー大丈夫大丈夫!あたし強いし、大声出るし。」

それなら任してと言わんばかりにガッツポーズすると、翔真はいきなり立ち上がりその両手をガシッ!と片手で掴み引き寄せられ、

ーガタッ!
「ー!!?しょ……っ」

体は強く引っ張られると体制が崩れ、テーブル越しに引っ張られ身動きとれなくなり翔真の胸の中に引き寄せられ、

「離せーー……」
そう口にすると翔真は未茉の頭を片手で自分の胸の中にギュッ押し込まれ「ん゛ーー!!」喋れなくなると


「……言っとくよ?今、俺半分の力も出してないよ。」

「ーーッ!!」

「夜に公園で一人でいて突然襲われたり、知り合いだから油断して家に連れ込まれてこんなんされたらどうするの?」

「……」

「痛い目あってからじゃ遅いーー」と言いかけた時、

ガブッ!!と勢いよく翔真の胸をシャツ越しに噛みつく。

「痛てぇ…」
「急に卑怯だろ!!!」

腕がほどかれた時、バンっ!って思わず翔真の胸を思いきり叩いて、顔を背けた。

ムカついて涙ぐむ未茉には、悔しさが襲った。
‘まだ力の半分も出してないよ’
そんなお前弱いだろ、みたいな言い方されたことに…… 腹が立ったのだ。


「……うん。俺が悪かったごめんね。」

翔真は誰の気持ちだって察することができる。
だから未茉の‘自分は強い’っていう根拠のない自信を今壊してしまい泣きたいくらい悔しがってることも分かる。

こうなるだろう、と思いながらもあえてやったのだ。

「ごめんね。」

謝る翔真に俯いたまま背を向けたまま未茉は静かに座った。

しばらく数分無言が続いた後、

「約束して。俺、未茉ちゃんになんかあったら嫌だよ。」

君は自分が思ってるより可愛くて魅力的で、そして君が思ってる程、体は強くない。

そう思いながら訴えるように伝えた。