「てか何もこんなに慌てて返しに行くことないじゃん。」

「借りは返さないと。」

意味深な笑顔を浮かべ珍しく強気な翔真は未茉を連れだった。


学校をサボって現在時間は10時。今、二人は駅の近くのコインランドリーに来ていた。
早乙女に借りたTシャツとジャージを洗って乾燥機にかけているのだ。

「今日帰って洗って明後日返しに行けばいいものを……なんでわざわざ学校サボって返しに行かなきゃならないんだよ。」

「ん~未茉ちゃんその格好、可愛いね。メンズTシャツを女の子が着るっていいな。」
「あ?さっきは早乙女のジャージすぐ脱げって言ったくせに何言ってんだお前」

早乙女のジャージを脱いだので未茉はぶかぶかの翔真のTシャツを着て下は制服スカートを着ている。

コインランドリーの待合テーブルで向かい合わせに肘ついて座る今日の翔真はいつも以上にニコニコしてる気はしたが、いつものおっとりとした空気感はなく、
 
「なんか今日の翔真は変。」
「そう?」
「うん。優しいんだか優しくないんだかよく分かんねぇ。」
「そうさせたのは誰だろうね?」

両腕をテーブルにつき、上目使いで何か言いたそうに見てきた。


「ま、なんでもいいけどさぁ。ふぁっ……」

規則正しく回転してく乾燥機の音に寝不足の眠気が襲ってきたところへ、

「見知らぬ男にホイホイ着いてくのはやめましょう。」
珍しく急に説教染みた言い方をしてくる翔真に違和感はあるものの、

「見知らぬ男になんか着いてかないよ。」
「じゃー言い方変える。よく知りもしない男の家に行くのはやめましょう。」