「そんなことねぇよ。頑張ってれば絶対大成のレジェンドになれるぜ!!」
「嬉しいな……」
優しくドリブルしてリングにボールを落とす早乙女は、ふと過去の自分を振り返り、目を閉じた。
(小さいことがハンデとなり、試合に出させて貰えない日々もあった。ポディションだって選ぶことなどできない。
自分に何ができるか、チームの為に何ができるか。
監督や仲間に怒られ見放される度に、ゴールに一心不乱に向かって走り抜ける白石さんの姿を思いだしバスケを続けてきた。
何かあるはずだ。バスケに恵まれた体格じゃなくても、僕にだって。
努力すれば、コートに立つことができるばずだ。
まずはディフェンスと、ドリブルと仲間を生かすプレー。
必死にノートに書き綴った。
泣いた日もあった。
挫けそうな日もあった。
辞めたくなる日も、未茉のプレーを動画で何度も見返し、道しるべにしてきた。)
「ずっと憧れてた白石さんにそう言われるなんて。今日は眠れそうにない。」
隣で楽しそうにゴールネットを揺らす未茉のプレーと無邪気な笑顔が自分に向けられてる幸せに静かに浸った。
「うっ……」
突然、未茉はお腹を抱え込んで倒れるようにしゃがみこむ。
「!!…… 白石さん!?」
「うー」
苦しむ顔でしゃがむ未茉に焦って駆け寄り、
「白石さんっ!!どうしたの!?」
「お・・お腹すいた……」
ぐぅ~~~と巨大なお腹の音が鳴り響き、真っ青な顔して早乙女は驚いて腰が抜ける。
(なんて子なんだ……変わってるなとは思ってたけど。でもクルクル変わる表情は見てて飽きないか。)
いい意味での裏切られる期待に、小さく吹き出した。
「だめだ腹ペコで動けない……早乙女、近くにコンビニある?」
「コンビニは大通り行かなきゃないよ。あ、それかちょっと頑張って歩ける?」
「ほんのちょっぴりだよ。」
「うん。家すぐそこなんだよ。おいでよ。」