「湊君に振られたの。もっと計算してもっと近づいてそれから告白しようと思ってたんだけど、なんか言わずにいられなくて結局玉砕。」
「…そっか。」
「湊君と仲のいい白石さんにムカついてバスケの集合変更の電話したの私だよ。」
「えっ?!」
「ごめん。」
そうきつく閉じた瞼で謝る横顔は今まで見た彼女とは違い、未茉には怒りも湧いてこなかった。
「二人の仲いいのを邪魔すればするほど、湊君は白石さんとより仲良くなってくから…馬鹿らしい。」
‘友達なのに分からないの?’
(表情を出さない彼が悲しい目で見下ろされたあの時、自分の企みを見透かされるよりも、自分の汚れた歪みが露になり胸に激痛が走った。)
「これ以上好きになってもどんどん嫌われるから、そうなる前に告白してちゃんと振られた。
湊君は、まるで何も見てないような顔して誰よりも周りを見てて、それでいてちゃんと自分には他人を踏み込ませないゾーンを作ってる。」
(ただ一人、白石さんを覗いては…)
「あたしも椎名さんを誤解してた。」
ボールをくるくると回しながら、不思議そうに顔をあげる彼女に
「翔真のことちゃんと知ってるんだなって。だって翔真のそういうとこが好きなんでしょ?」
嬉しそうに屈託のない笑顔で笑う未茉を見て、
(…私みたいな女と付き合われるよりはマシか。)と潔いため息を吐き、頷いた。
「私バスケ部辞める。」
肩にかけていたをジャージを未茉に返し恋にケジメをつけた。