「なんか……気が抜けた…」
へなへなと全身の力が抜けて床に崩れそうになると翔真が「おっと。」と受け止めてくれる。
「強がったけど、本当はお前らいなくなったら寂しいって思ってたからよ…あーーよかったぁぁあ。」
「ふっ」と未茉の安堵に包まれ声をあげるのを見ながら翔真も微笑んだ。
(でもきっとコイツらあたしが嫌だって言ったら受け止めてくれんだろうな…。なのに自分は友達なのにそうなれなかったんだろ。)
「マジ自分勝手だなあたし……最悪」
「え、何誰が??」
ずっと握ってくれてる翔真の手が温かくて優しくて泣きそうになる。
「さっき勝手に絶縁宣言しちゃってたのに許してくれるんだね。」
反省してるのかいつになくしおらしい彼女に
「……いや?許してないよ。」
と言ってみようと思った。
「だ、だよなぁ・・・わりぃ、ほんと。」
「んー」
翔真は窓の外をぼんやりと眺めた後、今なら言ってみようかと試みた。
「じゃ信頼の証にキスして。」
「!」
「そしたら許す。」
(さあ?どんな反応をするのやら…)と翔真は未茉を見つめていた。
誰もいない教室でオレンジ色の夕日に包まれながら窓際に腰かけ、手を握りしめ合いながら、目を潤ませ立ちすくむ彼女。
シチュエーションもドラマのワンシーンのようで悪くないと頷く翔真。
「えっキス?!!」
普通に顔赤くしながら、うろたえる未茉に、
「したことある?」
さりげなく探りを入れる翔真。
「いや…そりゃあるけど。」
(あるんだ……!)
少しショックをうける翔真をよそに未茉の脳内は幼き頃や中学時代に遡り、
パパやら、幼馴染みやら、弟やらにキスを強要されたことはある。もう数年以上前だが。
中学時代試合に勝ったハイテンションになった静香やらチームメイトとキスしてたことを思い出す。
「う~ん。そうだなぁ。確かにキスは信頼の証だなぁ。」
キスは本当に大事な人にしかしない行為だ。と、翔真の言う通りだと頷くも、
だが・・・・
(でもコイツはただの男じゃね…?)



