遠足から帰ると普段通り部活が待っていて、外周を走り終えた未茉は、

ーーざぁああっ……
水道の蛇口捻って頭から水を被ってると、目の前に長い手が伸びる。

「風邪ひくよ。」

キュッと水を止められると大きな影で灯りが暗くなった。

「翔真!」

「うん。」
今帰ってきたのか、遠足の時の私服姿の翔真はいつもと同じようにニコッとした笑顔を未茉に向けて、バッグからタオルを取り出してかけてあげると、

「いい。」
「風邪……」
「風邪なんてひかねーよ。そんなやわじゃねぇ。あ、これあたしのタオルか。」
返そうとしたが、そのタオルは前に交換したタオルだったの引っ張り返した。

「……」
翔真の方を見ないままタオルで頭を被せたまま尋ねた。

「椎名さんの体調は?」
「家で休んでるよ。もう大丈夫。」
「よかったぜ。」

それだけ聞いてほっとした未茉は体育館の方へ走り出そうとするので、

「え、何どうし……」
「ついて来んなっ!!」
「なんで?」

未茉の腕を掴んで翔真は振り向かせた。

「離せよ。」
だがその手を振り切ろうとするも、
「怒ってる理由教えてくれたら、ね。」

その手から、未茉が理由を口にするまで離さないっていう気持ちが伝わってくるような強さだった。