バスのトランクに荷物を置いてると、クラスの女の子達のきゃあきゃあと興奮気味に騒ぐ声が聞こえてきた。

「湊君でしょ?!」
「てか私白石さんとデキてると思ったからマジビックリしたー」
「でも確かに最近椎名さん湊君と一緒にいたよね?デキてたんだねー!!案外それ狙って二人でフケたんじゃない?」
「えーすごっ!!椎名さんやるねー」

「湊君に椎名さん抱き抱えられちゃってさーありゃ付き合ってなきゃ出来ないっしょ~」



「!!え!!?翔真と椎名さんが!!?」


「ちょっと……」
「あ」
盛り上がってた女の子達が未茉の驚く声に気づいてハッとする。

「あたし、椎名さんと翔真が付き合ってるの知らなかったんだけど…」

「あ…言えなかったんじゃないかな?」
「本当は椎名さんと一緒にいたくても湊君だってずっと白石さんが隣にいられるとさ。ねぇ?」

彼女達は互いに目配せをして、未茉に言いづらそうに伝える。

「男と女の友情のつもりかもしれないけど、ちゃんと邪魔だなって思ったら、二人の恋愛のために引いてあげないとダメだよ?」

アドバイスなのか忠告なのかよく分からない助言を女の子達に貰い、未茉はバスに乗り込んだ。


「あははっ」
乗り込むとすぐに結城が女の子達と盛上ってる声が聞こえてきた。

「あ、白石」
気づいて呼ばれたが、ムッと未茉は結城を睨んでドンッ!と座席に勢いよく音を立てて座った。

「な…なんだよアイツ…」

その横柄な態度に困惑するも、
(やっぱ翔真のこと気にしてんのか。それならそれで大きな進歩だが……なんで俺が睨まれなきゃならないんだ?)


帰りのバスの中、未茉の隣の席には誰もいなくて
肩に寄りかかる重みも寝息も聞こえず静かだった。

「いつも一緒にいたのに、ムカつくぜ。」

ーーガンッ!!!
積もった苛々を晴らすように未茉は足で思いきり前の座席を蹴りあげた。