「はぇーなっ、あの二人。」

さっさと行ってしまった未茉とキタローに置いてかれ、まだ目が覚めきってない低気圧な翔真はおぼつかない足取りで文句を言いながら登る結城達の後に続く。

「湊君大丈夫?眠いの?」
「うん…」

そして椎名は気にかけながらさりげなく隣を歩く。


「週末試合なんでしょ?見に行くからね!」
「いやー俺出れるかわかんねぇし。」
「えー出れるに決まってるじゃん!!BIG3あってのうちの男バスじゃん!!」
前ではなんだかんだ楽しそうに結城は女子達を連れて歩いてる。

「えっ、白石さんって湊君と付き合ってるわけじゃないんだ?」
「バカッ!シッ!聞こえる!!」

その時、隣のクラスの女の子達の話声が聞こえ翔真達は振り返ると、会話が止まった。


「モテるよね。白石さん。」
その会話をネタに、椎名は翔真にさりげなく言った。

「凄くね。大変だ俺。」
「……どこが…」
「ん?」
「どこがそんなに好きなの?」

眠気が覚めたように翔真は足を止めて椎名の顔をどことなく寂しい目で見た。

「友達なのに分からない?」

「……!」
「未茉ちゃんの友達なら分かるでしょ?」

「あ……」

胸に突き刺されたような気がして、急に全身が震え言葉が詰まり声が出なかった。

「……ッ…」
涙を流しながら胸を押さえて力が抜けたようにしゃがみこんでしまった椎名。

「ーー椎名さんっ!? 」
苦しそうな彼女に気づき周りのみんなも集まった。 

「えっ何?大丈夫?」
「具合悪くなった?先生呼んでくるからっ」

「椎名さん大丈夫?」
翔真もしゃがんで椎名の背中をさすり始めると、彼女の涙は余計に止まらなかった。