「わぁーいっ!!見えてきた見えてきた山だぁ~~~い!!」

遠足当日、険しい山道を登るバスの揺れに気持ちよさそうに未茉の肩を枕代わりにして隣ですやすやと眠る翔真。
窓に手をやり顔をびったりつけて、緑が生い茂る山々の町並みを見渡して足をバタつかせ喜ぶ未茉。

「山登りであんなウキウキしてる奴そういねぇよ。」
「ああ、帰ったらまた鬼練なのに」
後ろの座席で結城と三上は、帰宅後の部活を思い浮かべるとげんなりしながら窓の外を見ている。

「すやすや……」
ここぞとばかりに未茉の肩を借りて幸せそうに寝る翔真。

(白石に食べて貰えるお弁当とおやつ…)
昨夜から徹夜で未茉に食べてもらおうと腕によりをかけて作ったごちそうを持つご機嫌のキタローに、

「うわ…キタローがニタニタ笑ってるぞ…」
「やべ呪われる…」
「事故る…」
ただならぬ弾んだ念に取り巻かれるバスの車内で生徒達は、動揺を隠せずいると、

(やはりっ!!都市伝説か!?キタローが俺の恋活を邪魔してんのか・・!!こんなに高キャリアな俺が女の子に相手にされないわけがない!!)

同じクラス、そして部内にいるようになってから、女の子と縁から遠ざかっていくような気がして新米斎藤は、キタローの呪いから我が身を守る方法をネットで検索しまくっていた。