「あ、白石さん。」

トイレに行くと鏡の前で椎名さんやクラスの女子達が化粧をしていた。

(うっ……化粧品臭せぇ……)と思い鼻をつまみつつも、
「え、化粧してんの?バスケん時落ちない?」

化粧品がパンパンに詰まった化粧ポーチを見ながら、ふと思った疑問を尋ねる。

「ウォータープルーフだから落ちないよ。」
「ウォーターブルー…?」
ちんぷんかんぷんな横文字に首を傾げると、

「白石さんってマスカラしなくても自睫毛長いよねー羨ましい!」
「そおか?そんなの気にしたことないや。」

初めてと言ってもいいくらいに初めて椎名さん以外の女の子から普通に話しかけられて少し嬉しくて返事すると、

「ねぇ、白石さんもマスカラとリップくらいしてみたら??」
「うんうん絶対かわいーよ!」

“え・・・あたしはいいよ。”と言いたかったが、せっかくの空気に水を差すと女子は面倒くさいのも知ってるので断れず・・・。

いつもバスケ終わった後も「あっちぃー」ってクールデオドラント振り撒くくらいの未茉にとって化粧は未知の世界だったが、


「あっ、やっぱかわいーじゃん!元がいいからっ!!」
「なんか睫毛ひっぱれて超痛かったぞ」
「あははビューラーだよ!ビューラー!慣れるよそのうち!!」

うーん…と笑いながらも、睫毛が瞼に向かってびんびんに立っているの違和感のある目元を鏡でジッと見てる未茉に椎名が言った。

「でも白石さんには化粧品よりバスケボールの方が似合うよ。」
「おう!!あたしもそう思うっ!あははっ。」

嫌みなのに誉め言葉としてとらえた未茉に椎名はまたストレスを溜めた。