「!!?…そんなまさかっ」
ざわつく先輩達が目を疑うのをよそに、ボールはネットへと音を立てて、パサッ…と吸い込まれた。
(天才は噂通り、本物か…)
鈴木はその目で見てもまだにわかに信じがたい。
「あれ噂の白石未茉か?!」
「っーか、めちゃくちゃかわいい…!!」
「すげーまぐれにしたって凄すぎじゃね…」
思わず男子バスケ部の足が止まる程の光景だったようだが、
「まぐれじゃねーよ!!」
むぅと頬を膨らませて未茉が睨むと、部員達はあどけないその顔にドキンと胸が高鳴る。
「あはははっすげー!ナイシュー」
翔真だけは、こっちを見ながら屈託のない笑顔でコートの中で一人笑った。
「さて。こん中で一番上手い女子って誰っすか?」
…ダム…
未茉はゆっくりとボールをつきながら、部員達を見渡した。
「なんなの…!あんたさっきから生意気に」
二年がその態度に腹を立て前に出るも、鈴木が止めると、
「相手になってやれ。鈴木。」
「「野村監督…!!」」
その時、体育館へやってきてそう指示を出したのは、監督だった。
「あ、ノムさんだ!!」
未茉は指をさすと、
「「ノ・・ノムさん・・・!?」」
監督に向かってなんという口の聞き方だと部員達はひきつるも、プッと笑いを堪える者もいる。
「はい…!」
だがそんな空気もおかまいなしに真面目な顔で鈴木はそう返事すると、すぐにドリブルを始めた。



