「あれ?君は確か…」

未茉に会いに行こうとコートへ向かう翔真がギャラリーの一番隅っこで試合を見ていた見覚えのある男を見つけた。

「ふふっやだー!!」
「もー東城君ってばぁー!!」
両サイドの席に女の子を侍らせて盛り上がっていたので、声かけたらまずかったかな。と翔真は通り過ぎようとするも、

「あ、あなたは先輩の…」
さすがに歩くと目立つ翔真に禅は気づくと、
「ちょっと待ってて」
女の子達の席から抜けてきた。

「確か、湊さんでしたっけ?」
「うん。東城君、だよね?」

未茉の中学校の後輩の禅は、未茉と仲良かったので翔真の記憶のライバル項目に強くインプットされていた。

「未茉ちゃんの試合見に来てたんだ?」
「当たり前じゃないですか。ユニフォーム姿可愛くて萌えるんすよね。」
「・・・ピキ」←血管のキレる音

携帯を取りだし満足そうに写メ一覧を見て、嬉しそうに見返してる姿に、
「え、どれ見せて。」
禅の携帯を覗きこむと、

「あ、本当だすっげーよく撮れてる。あ、これ可愛い」
「でしょ?」
どや顔の禅の手元から、画面をスワイプするふりをして、
「あ、わりぃ。手元が滑って写真データ消えちゃった。」
にこっと微笑みながら禅に携帯を返すと、

「はぁぁあ!!?」

大声を張り上げ、ブチぎれながら写真を確認するも、
「一枚も残ってない・・・・!!てってめぇ!!何しやがんだよ!!!この野郎!!!」

掴みかかろうとする禅の猛攻をふらっと交わして、
「じゃあね、東城君。また。」
挨拶して立ち去ろうとすると、

「待てよっ!!…まさか先輩と付き合ってんのか…!!?」 

「んー。まだ、ね。」
あえて意地悪に交わして余裕綽々に答えた。