ーーダンッ!!

「クソ…自分で行くと思って油断した…。」
まんまとフェイクにかかってしまった石井は苦しい表情を浮かべ、
「しかもなんであんだけ囲まれてんのに、ちっとも怯みもしないあの女…」

「せやから先輩言ったやないですか。未茉にはデカさや強さは通用せぇへん。逆にアイツファウルを取りに行こうと芝居がかるのが上手いんや!!」
苛立つ先輩に分かっていながらもやられっぱなしの静香までもが怒りだす。

「明徳にはここ二年は負けたことなんかないのに…!しかも前半で同点にまで追い付かれたことなんかない!!」
「今日もあの一年が入ってくるまでは100点ゲームができるくらいの力の差を感じてたのに……」
あのすばっしっこいスピードに振り回される大成の選手も苛立っていた。

「ドリブルも、ディフェンスも、1対1も、パスも、上手い…」
「完璧じゃねーか…アイツ…」
なんでもさらりとこなす未茉を肌で感じて恐怖すら覚えた。

「天才だからね。彼女は。あんた達のいい練習相手見つけるのも東京じゃ大変なんだから。」
はいはい。と少し満足そうにその反応に喜ぶ大成女子の監督は、

「どうする?田島、行く?」

ベンチで温存されている大成女子キャプテンの田島に微笑み尋ねた。