駅から離れた距離をこれ以上ないくらいの全力疾走してきて、未茉は極度の震えに襲われていて、体温が急激に冷めて青ざめて汗が引いてしまい、軽い脳貧血を起こし、
ーーぎゅっ、
「-ー!」
「大丈夫。」
彼女の冷たい手先を自分の手で温めて、翔真は未茉を引き寄せ抱き締めた。
「もう大丈夫。」
翔真の大きな体の中で包むように、震えを押さえるように、頭に顎をのせて髪を撫でてくれるその手が、不安を一気に安心に変えてくれる。
「ありがと…翔真っ…」
「勝てるよ、大丈夫。」
泣きじゃくる未茉のおでこに自分のおでこをくっつけながら、心を落ち着かせようとしてくれる彼のスマートな優しさが伝わり、
「うん……うん!」
涙を拭きながら未茉は大きく頷くと、
「白石!…あ…」
まずいとこに来てしまったと真っ赤になるキタローだったが、
「ホットタオルとこれドリンク…」
「ああ、ありがとう…キタロー、マジ助かる」
その優しさに涙をこぼしながら、受け取り
「じゃ着替えてくる!」
切り替えて控え室に入っていった。
「……はぁ」
翔真に追い付いていた椎名は二人の姿を影から見ていて、
(なんなの…なんなのよ……
こんなんなるなら……こんなんなるなら……)
唇を噛みながら拳を強く握りしめると、
「…!」
強い邪気を遠くから感じたキタローは振り向き、椎名を見ていた。



