11時10分、試合開始20分前。
大成女子が控え室からコートに出てきてウォーミングアップを始めた。

「翔真。来てたのか。」

ギャラリー席の隅で座ってる翔真を大成男子バスケ部の白の巨人・マイクが発見した。

「あれ、見つかっちゃいました?」
(お忍びのつもりだったのに…)

「What?…まさかお前部活サボりできてるのか。気づかれたくなかったらそのデカイ身体どうにかしろよ。」
苦笑いをすると、マイクは翔真の隣に腰かけた。

「マイクさんも部活サボリですか?」
「違う。俺はまだ見学の身だ。」
「ああ……確か怪我…」
「大丈夫だ余裕で間に合う。インターハイ予選では明徳をぶっ潰す為にな。」
「まだ何も言ってませんけどね。」


「……怪我してなくてもこの試合はサボってでも見にきたかな。」

そう何やら訝しげにマイクはコートに目をやる。
「お、明徳も出てきたぞ。」
「あ本当だ。」

「「ん?」」

二人で未茉の姿を探すが、見当たらない。

「スタメン選ばれなかったのか?」
「まさか。昨日もスタメン呼ばれてたし。」



「湊君!」

(また見つかったか…)と思いながら恐る恐る振り返ると、そこには椎名が私服姿で立っていた。

「あ、椎名さん。」

「隣いいですか?」
「ん。どうぞ」
「ありがとう。」

体育館には不似合いなギンガムチェックのワンピに白色のカーデを肩に巻いてサンダル姿はまるでデートスタイルのような彼女に、マイクは翔真の耳元でこっそり尋ねる。

「彼女か?」
「違いますよ。」