「なにぃ!?白石が今こっちに向かってるだとぉぉお?!!」
11時5分前。
試合まで約35分前。
大成高校の体育館の控え室では、未茉以外の部員達が顔を揃える中、橘から連絡のあった野村監督の驚愕の声が響いた。
「「えぇ?!!」」
そしてもちろん部員達にも動揺が走った。
バッシュの紐を結び直していた鈴木も顔をあげ驚きを隠せない。
「白石の家に今日はバスで行くから変更って誤連絡があったらしい。」
「ええ?そんなまさか……」
‘白石のスタメンを憎んだ奴の嫌がらせじゃないか……’
みんな口には出さなかったが、一瞬そんな雰囲気が流れたのは言うまでもなかった。
「もし間に合わなかったら桐谷。お前がスタメンだ。」
「はい!」
少し嬉しそうに返事をしたように聞こえた部員がヒソっと誰かに何かを言ったように聞こえ、
「何よっ!!言いたいことあるならはっきり言いなさいよ!!!」
振り返り桐谷がユニフォームの上に羽織っていたジャージを脱ぎ、みんなを睨み付け
「言っとくけど私はそんなせこいことなんかしてないからっ!しかも普通に考えて白石もバカよ!10時にバスで出発で間に合うわけないじゃない!!騙される方もバカなのよ!!」
「おいおい、試合前に……」監督がそう言いかけた時、
「その通りよ。こんなんじゃ大成に勝てない。こんなチームじゃ。」
静かに低い声で鈴木がそう言うと、控え室は一瞬にして静まり返った。



