「はぁはぁはぁ……」

見えない相手をイメージして無我夢中でボールを何十本何百本ゴールに入れ続け、足の疲れにようやく気づき床に倒れ込むように腰を着く。

「……」

もうかれこれ三十分前から体育館の壁に寄りかかって座る未茉を見つめる翔真の視線にも気づかず黙々と練習をしていた。

「…あれ、翔真いたの?」

キタローが用意してくれていた冷たいタオルを頭に被せながら水筒を飲む時、ようやく気づいた。

「ちょうどいいや、ボール拾うの手伝って。」
「うん。」
「サンキュー」
汗で滑るボールを拭きながらかごに戻してく。


「洗濯終わった?ありがと。畳むの手伝うよ。」

ちょうどキタローがタオルやビブスやらを乾燥機から取り出して持ってきていたので未茉も手伝うと、
「いや…大丈夫、これで終わりだから着替えてこい。」
「いいって!いつもあたしの手伝いしてくれるし、たまにはあたしがキタローの手伝いしないとな!」


(何よあれ。翔真君の前でいい子に見られたいからってキタロー相手にあんなぶりっこ発言して。気持ち悪。)
「騙される!絶対…!!」
影から見ていた椎名は舌打ちしながら、睨んだ。


10時前になった静かな夜道にチカチカした街灯が点滅する中、着替え終えた三人がワイワイ話しながら、自然に駅まで並んで歩き出すその姿もこっそりずっと見ていた椎名は、

「…」
あんな風に翔真に思われてる未茉への嫉妬心で胸がいっぱいになった。