更衣室で着替えてデオドラントをしっかりして、香水さりげなくつけて偶然を装い、BIG3と帰る予定の椎名はこっそり乗降口に隠れて待った。
「あ、お疲れ様ー」
結城と三上が見えて、ひょこっと下駄箱の影から顔を出して椎名が笑顔で挨拶した。
「おうお疲れー」
「遅くまでハードだよねうちのバスケ部って。」
(よし湊君もいる、やった!)
椎名は心の中でガッツポーズした。
「椎名も大変だろ?ピアノ」
「そーだよな~白石の酷い指揮に合わせてさー」
あはははっと結城と三上が笑って言う。
「いえっ、私なんか全然…でも白石さんバスケもあるのに大変だったら他の人と代わった方がいいかもね…。」
「え、なんで?」
その時、のんびりと眠い目を擦りながら後ろを歩いていた翔真が初めて口を開いた。
(やば……私なんか変なこと言っちゃった……?)と内心心臓バクバクの椎名はうつ向いてしまった
「頑張り屋だよなアイツは」
「バカだけどな」
さっきまでバカにしてた結城と三上なのに憎めないって感じで笑う二人を見て愛情の裏返しだと知った椎名はなんだかつまらなかった。