「優しいなぁ。」

たまに突き放すも、プレーでも信頼してくれてる彼女の優しさを感じてると、女バスでうまく馴染めるか不安はあったが、その不安を一番に取り除いてくれることが未茉にも伝わってきた。

(おしっ!!その思いに答えるためにコンクールの指揮は頑張って振って振って、次の練習試合大成には絶対に勝つぜ!!!)


「勝つのだ……ムニャムニャ……」


陽射しの当たるふかふかのホールの絨毯の上で、水溜まりのようなヨダレを滴ながら未茉は指揮棒を掴んだまま寝てしまっていて

「・・・」
ちょうどそこには音楽室で練習し終えたキャプテンが再び通りかかって気持ち良さそうに眠る未茉に額の血管をピクピクさせてひきつる。


「あれ、なんか幸せそう……」

隙を見て外周から抜け出してきたジャージ姿の翔真が未茉の元へやってきた。

「全く。指揮教えてやってたらこの有り様。本当に困った子ね。」

鈴木の怒ってるようで怒ってないように優しく聞こえた声に翔真はフッと微笑み、腰に巻いていたジャージを未茉の足元にかけた。

「…湊、白石のこと大好きね。」
「本人はこれっぽちも気づいてませんけど。」

「あら、お気の毒ね。」と笑みを浮かべ去っていくと、
「起こさなくていいんですか?」
「……あと10分ね。」

朝練、部活、居残り自主連、一年ながらにハードな日々を送ってるのを知ってるからか、そんな優しさを示した。

「ぜったい……勝つ」

翔真の左太股にすやすやと眠りながら寝言を言う未茉の頭をそっとゆっくり乗せて10分、彼女の眠りを見守るつもりが、

「「Zzzz……」」

鼻風船を膨らませ翔真まで眠りこけてしまい、女子バスでキャプテンは、

(湊も一緒に寝てんな…全くあのバカエース二人組め・・・ったく!)

ご立腹なのでした・・・。