「へったくそ。」

「!!
キャプテン……!」

それから40分、永遠に指揮棒を振り続け練習してると冷たい声に振り向くとキャプテンが立っていた。

「闇雲に何時間振り続けたってうまくならないわよ。」
涙目の未茉が言葉を返せずにいると、
「試合前に手がイカれたらどうすんのよ。」
「うぅ……っ」


‘ふう。’とため息ついてキャプテンは長い髪をかき揚げて未茉の後ろに回り、後ろから手を握ってあげる。

「まず指揮棒の持ち方が違う、こう。そして腕の力は抜く。そう。」

「はい。」
「そしてしっかり両足はしっかり地に着けて少しだけ前屈みになる。そう。それで全体と演奏者の方を見る。」

少し形を変えただけなのに、さっきより全然軽やかに手が動けるようになり、
「おおっ!!感覚つかめた!!」
感動してると、体を動かす度、ふわっとキャプテンから香るいい匂いに鼻をくんくんと動かすと、

「集中っ!」とペシッと叩かれた。
「いてっ。」

「そう、落ち着いて音を聞きながら振って、そう両手を使ってここのパートは大きく振る。そう」

何度も何度も後ろから一緒に指揮棒を振ってくれて体が覚えるようになった。

「わぁっ!!凄い!!なんかコツ掴めた!!!
うん!こりゃイケる!!」
確かな手応えを10回くらい繰り返したら掴めると、

「キャプテン!!本当にありがとうございます!!せっかくなんでもうちょい練習したら部活行っきやす!!!」

「ま、せいぜい頑張って。」
チラッと見て、また冷たく捨て台詞を残して鈴木キャプテンは去っていった。