「じゃ、今日明日多目的ホール借りれたんで二組全体練習で放課後16時からで。」

合唱コンクール実行委員会の翔真が教壇に立ちあれこれ告げるとみんな声を合わせて返事する。

「「はぁーい!♡♡」」

女子が目をハートにして張り切って可愛らしい声で返事をしているのを見て未茉は、
「宗教かよ・・・」
呆れ顔で苦笑いを浮かべる。

「へー。お前ってコート以外でも意外とまとめられるんだな。」
移動を始める結城が席を立ちながら翔真に棒読みで感心する。

「だって未茉ちゃん、自分でいっぱいいっぱい。」

指揮棒を両手に持ち振り回しながら冷や汗をかく未茉を指差す。

「……お前はほんとバスケ以外に才能がないんだな。」

呆れながら呟くと、「むっ!くらえっ指揮棒チョープッ!!」と言って未茉が仕返しに結城に飛びかかる。

「白石さん、大丈夫?」

そこへ椎名さんが不安そうに尋ねてきた。

「だよな。演奏者が一番の不安だよなこの下手っぴな指揮じゃよ。」
そしてまた未茉の指揮棒チョップが結城に襲いかかる。

「わりぃな。椎名さん。練習してんだけど……」
「全然、大丈夫だよ!!指揮も教えられると思うから何でも聞いて。」
「ほんと!?超ー助かる!!さんきゅ!!!」
「ううん。」

楽譜と一緒にキーボードをBOXに入れてる椎名を未茉は見て、

「あ、そっかホールだからピアノないんだ!あたし運ぶよ!!」
「えっ、重いから大丈夫だよ!!」
「大丈夫大丈夫!腕力は超鍛えてるからっ!!」

そう言って未茉はキーボードを片手でひょいっと持ち上げた。