最後の曲は、新しくできた三拍子のラブソング『EVERGREEN』。
フロアの後方には、心配そうな顔でライブを見つめる翠さん。
この曲をもっと早くに彼女に聴かせれば、結論は変わったのだろうか。
切ない気持ちになったけれど、クノさんは曲の前にこう話した。
「新曲やります。『ブルー/イエロー』」
え? EVERGREENじゃないの?
慌てて、葉山さんと目を見合わせる。彼も慌てていた。
曲の始まりはクノさんの歌とギターのみ。
彼はちゃんとEVERGREENを歌っていた。
葉山さんと頷きあい、私たちもそれぞれ楽器を奏でた。
『ラブソングなんて嫌いだった
作る気になったのはきみのせいだ』
重い演奏に、切ない歌詞。伸びやかな歌声を生かした美しいメロディ。
お客さんがこの曲に一気に引き込まれていくことを感じた。
曲の途中であることに気がついた。
サビの歌詞ががらりと変わっていた。
『孤独に負けそうになったら
いつでも戻ってくればいいよ
その時は吐き出す音楽で
きみのこと救えたらいいな』
手で口元を覆い涙を流す、翠さんの姿が見えた。
翠さん、やっぱりクノさんの一番は翠さんだったはずです。
この曲はきっと『透明ガール』の代表曲になります。
そんな曲を彼が生み出せたのは、あなたの存在があったから。
あなたを想うクノさんの気持ちが本物だったから。
そう想いながら演奏を終えると、今日一番の歓声と拍手に包まれた。