あっという間に日々は過ぎ、初ライブの日がやってきた。

個性豊かなバンドが次々登場し、様々な音楽がステージで奏でられる。


とうとう次が『透明ガール』の出番。


「よかった~。みんな来てくれた」


楽屋からこっそりフロアの様子をのぞき見る。

私が呼んたのは、中学時代の友達とその友達とで、計5人。

なんとか目標達成。


ステージ近くにはミハラさんと翠さんもいて、嬉しくなったものの。

穂波さんやクラスメイトの姿も見えたため、そっとドアを閉じた。


楽屋でメイク直しをしていると、鏡越しにクノさんにまじまじと見つめられていることに気がついた。


「な、なんですか?」

「お前なぁ、ずっと思ってたけど、あか抜けねぇ地下アイドルみたいな見た目だな」

「ええっ」


一歩下がり、改めて自分の全身をチェックする。


いつもの三つ編みヘアにTシャツ、プリーツのロングスカート。

翠さんにメイクしてもらったものの、遠くから見ればただの地味な女子だ。


「髪の毛、おろして」


クノさんに命令されたため、しぶしぶ三つ編みをほどく。

くせのついた髪の毛が四方八方にうねり出す。


「これじゃあだらしないですよ~。うわっ」


あわあわしている間にクノさんに髪の毛をぐしゃぐしゃに乱された。

めちゃくちゃ広がっちゃったんですけど!


「これくらいがいいわ」


葉山さんも「おっ、いい感じじゃん」と口にした。


恐る恐る、顔をあげる。

ぼさぼさの髪の毛の私、ニコニコしている葉山さん、そして満足そうな顔をしているクノさん。


鏡には『透明ガール』の三人がいた。


ステージに出る直前、耳元でクノさんに言われた。


「クラスでハブられてんだろ? 見返してやれよ」って。