「この前は影薄かったけど、よく見ると可愛いよね」

「え?」

「髪の毛、おろしてみたら?」


彼のきれいな二重の目に、じっと見つめられている。

獲物を捕らえようとしているかのような、そんな目線。


「……っ」


慌てて目を逸らす。

すると、壁際に立てかけられている一本のギターが目に入った。


丸みを帯びながらもシャープさを感じるフォルム、端に向けてメープルから黒へ変わるグラデーション。

好きなバンドのギタリストが使っているのと同じ型。

そして、前に彼がライブでかき鳴らしていたものだ。


「そんな警戒しないでよ。寂しいじゃん」


確か、ジャズマスターって言うんだっけ。

なんてことを考えていると、膝に置いた手を引かれた。


「あ、はい……?」


距離が近づく。

心じゃなくて、物理的な距離が。


「間宮ちゃん。こっち見て」

「……え」

「キスしよ」


――あれ。私……今、クノさんにせまられてる!?